「モノ作り」
とは当たり前に、物を作ることを言うのだが、ここには、
「特に熟練した技術者がその優れた技術で精妙を極めた物を作る」
という、意味が込められている。
今は、コンピュータで制御すれば、自由自在にモノを操作することができる。
一方で、力学の世界を理解し、モノの連携と力の伝わり方を解析し、そのモノを思い通りに動かすことに、技術者は長年試行錯誤を繰り返してきた。そして、その技術者の積み重ねは、コンピュータ制御が当たり前の今の世の中でも、確実に私たちに「大事なこと」を教えてくれている。
小さな虎ちゃんが、首を振りながら、ちょこちょこ動きまわり、時に止まって吠えたりするおもちゃ。これは、ひとつのモーターで複雑な様々な動きを作り出している。そこには、複雑なコンピュータ制御の基盤などは存在しない。ひとつのモーターで複雑な様々な動きを作り出す、というメカ設計の極意が詰め込まれている。
メカ設計を専門に大学で教えている先生が言われていたこと。
「虎ちゃんの動きの方から考えるのではなくて、そもそもモーターが回ってその力をどのような形でどこに伝えるのか、という、メカの根幹の部分から考えないと、うまくつながらないし、つじつまも合わなくなる。この考え方の順番を間違えないことが、メカ設計では大切」
我々は、どうしても末端の見えるところに注意を向けがちになる。
でも、実は一番大切なことは、その大元のところがどうなっているか、ということ。だからこそ、科学の世界でも、基礎研究は大切だし、その基礎研究を応用して社会に役立たせる工学の世界は魅力的なのだ。
ちょっと身近な例で考えて見ると、料理研究家の土井先生の言葉を借りれば、
「素材が美味しければ、調味料はなにも要らないのです」
と言う話にもつながる。
「おいしいものを作ろう!」
と、塩を加減し、砂糖も入れて、しょうゆは少々、さらに旨味はメープルシロップを隠し味にするとぐっと深みが増すと聞いたので入れてみたり、でもなんだかちょっと違うから、めんつゆも少々・・・
なんて小手先で調合しても、出来た料理がおいしくなった試しがない。これは体験談。
最近は、手軽なレトルトソースと素材を合わせれば本格中華!
に慣れっこになっているしなあ。反省。
でも、それよりなにより最初に解決すべき問題は、
「素材本来のおいしさを、そもそも私は分かっているのだろうか」
だな。問題解決はまずはここから。
小手先でなんとかつじつま合わせをするのは、結局本質的な問題解決にはならない。